3月21日に配信したトスティ50番の第6番の解説と、表現力を身につけるために効果的なトレーニングについてご紹介します。
トスティ50番について
トスティ50番は、歌曲で有名な作曲家トスティによる発声のテキストです。この楽譜を出版している全音楽譜出版社のホームページには、
声楽の基本テクニックをすべて網羅した練習曲集。コンコーネ50番に較べより音楽的で、練習曲とはいえメロディーの美しさを楽しめます。トスティの声楽教師としての抜群のセンスを示した名著です。
と記載されています。
まさにこの紹介文の通り、声楽を勉強している人すべてにおすすめしたい発声テキストです!トスティ特有の親しみやすい、甘く優しいメロディーは何回歌っていても飽きません。
また、曲ごとの課題がはっきりとしていて、どこに気をつけて歌えばよいかとてもわかりやすいです。今回は6番を取り上げていますが、初心者の方は1番から順に勉強していくことをおすすめします。
第6番のポイント
第6番は7度の音程がたくさん出てきます。音が跳躍するときに不自然なアクセントがつかないように、レガートで歌う練習をしましょう。音程がどうしてもぶら下がってしまうという人はドレミで歌ってみてください。
この曲はF-durですが、ところどころB-durに転調します。和音の変化を聞き逃さず、調性にあったトーンで歌えるといいですね。
ピアノパートは、右手ではなく左手のフレージングに重点をおくことで歌い手とブレスのタイミングが合いやすくなりますのでお試しください。
表現力を身につけるトレーニング方法
トスティやコンコーネのような発声テキストを利用して、表現力を身につけるトレーニングを行うことができます。
発声テキストの曲が問題なく歌えるようになったら、その曲にあったショートストーリーを考えてみましょう。難しい場合は色やお花、絵画など具体的なものを思い浮かべて歌うのもいいでしょう。
具体的なイメージをもって改めて演奏することにより、自分の考えた物語にふさわしい演奏かどうかを客観的な視点で判断できるようになります。自分の求めている表現に対して必要な発声の技術が分析できれば、その技術を習得するための練習を行えばいいのです。
コンコーネやトスティ50番には歌詞がないので、表現力を鍛える教材としてもおすすめです。
物語を書くコツ
例えば、6番の歌で私がイメージしたストーリーは、
春がやってきて、菜の花畑は花が満開に咲いていました。心地よい春風に吹かれながら、菜の花たちはちょうちょやみつばちがたくさん訪れてくれるのを待っていました。そこに、花のみつを求めて2匹のちょうちょがやってきました。菜の花たちは大喜びです。
2匹のちょうちょは
「菜の花さん、おいしいみつをありがとう。」と言いました。
菜の花たちは
「わたしたちの花粉を運んでくれてありがとう」と言いました。
2匹のちょうちょと菜の花たちは、お互いにありがとうの気持ちを受け取って心がとてもあたたかくなりました。ありがとうの気持ちがいっぱいの菜の花畑を見て、そよそよと吹いていた春風もとても幸せな気持ちになりました。
いかがでしょうか?こんなに長いストーリーを考えるなんて無理!と思われた方も、コツさえつかめばすぐに書けるようになります。
物語に限らず、文章の書く時のコツは“5W1H”をきちんと決めることです。
When:いつ→大まかな季節でいいので決めましょう。
Where:どこで→海、山、学校など、だれでも共通のイメージが持てる一般的な場所がおすすめです。
Who:だれが→登場人物はいちばん大切です。人間に限らず、動物や植物を擬人化するのも効果的です。
What:何を→登場人物が何をしているか考えましょう。
How:どのように→物語を盛り上げるポイントとなります。登場人物がどのように感じたから物語が動いたのか、わかりやすく表現できるといいですね。
Why:なぜ→登場人物が感じた気持ちの理由づけです。
別に童話のテイストにこだわる必要はありません。曲によっては恋人に対するラブレター風に書いてみるのもいいでしょう。自分の中で色々イメージすることも表現力を鍛えるためには効果的です。行き詰ってしまったら物語のヒントを求めて出かけてみましょう。
歌の勉強は歌うことだけではありません。日頃の生活の中の小さな感動を大切にすることによって、より深い表現ができるようになります。
特に、トスティ50番は魅力的な曲がたくさんあるので、ストーリーを考える材料としてもぴったりです。テキストをひと通り歌ってしまったという方は、上記の方法でもう一度最初の曲からチャレンジしてみてはいかがでしょうか。